茅葺き屋根の素晴らしさ

農ある暮らしを目指して その14

 一緒に畑で耕作している星先生から来年の土づくりの準備として旧家の茅葺き屋根の茅をもらいに行きましょうとお誘いいただきお邪魔してきました。そこは市内にある登録有形文化財の小坂家住宅。作業をされている茅葺き職人の松澤さんが出迎えてくださいました。

到着するなり星先生が手の平の記念撮影を依頼。それも納得、真ん中の松澤さんの手は大きく厚く発達しているのがよく分かります。松澤さんは小谷屋根の代表として全国各地の茅葺き屋根の普請を行う茅葺師。軍手をすると茅の状態など察知する感覚がぼやけるとの事。だから常に素手で作業されている。子供の頃は素手で芋掘りをして先生を驚かせたとおっしゃっていた。

建物を濡らすわけにはいかない。足場と屋根ですっぽり覆われている。

足場に登り茅葺き屋根を目の前にするとその茅の質量に圧倒される。こんなにも厚い。部位によって使用する茅が異なるそうだ。建物が完成したのは江戸後期、これまで部分補修は行われていたが全面改修は建築依頼初めてとなるそうです。つまり下地として使われている茅、藁縄などは全て当時のものとなる。

さらに屋根の上へ。水上側から既存茅を撤去している。上部には気抜き用の越屋根がある。

屋根上で松澤さんによる解説を聞く。

 屋根上で実際旧茅を撤去してみると煤が付着している。この煤には環境に適応した微生物が多く住んでおり有機肥料として畑に撒くと土壌改良になる。今でもこの煤をお茹でとかして飲む方がいるそうだ。

粉砕していただいた茅もいただいた。

 最後に室内も少しだけお邪魔させていただいたが無断熱にも関わらずヒンヤリしていて気持ちが良い。茅葺きは断熱、調湿、浄化作用など目に見えない効果をもたらしてくれる。

小坂家全景

軽トラック一杯に茅を積み畑横の倉庫へ移動。私が取得した田んぼは休耕田となり3年になるので土壌改良が必要だ。その為にいただいた茅を活用させていただくため来年まで保管しておく。農業は知恵の集積。それらに触れることは私にとって財産であり何より大きな喜びだ。